日本ではシリアのアサド政権が、反体制組織や民間人に対して化学兵器を使用したかのような報道がなされましたが、実態はかなり違います。

シリアが化学兵器を2013年ごろまで保有していたことは事実なのですが、このことに対してアメリカやEUの国連解明国が破壊と放棄を求め、シリアはこれに応じて国連機関であるOPCWの求めに応じ、調査団の受け入れと、OPCWから派遣された職員立ち会いのもと破棄作業を行っており、すでに化学兵器は持っていないことに成っています。

しかし2014年に、首都ダマスカスである事件が起きました。

現在シリアは内戦状態に有り、反体制組織やIS、アルヌスラなどを相手に戦っています。この反体制組織が支配している地域に対して、サリン弾頭を取り付けた小型ロケットを打ち込み、そのせいで民間人を含め、多くの人が犠牲になったと世界的に報じられたのです。

反体制組織は、ダマスカスの東側を制圧していたのですが、そこから5kmほど離れたアサド政権の支配地域から、サリン弾頭が打ち込まれたと主張しました。日本でもこの点だけが抽出され、いかにもアサド政権側がそれを行ったことが確定的であるかのように報じていました。

しかし実態はかなり違い、反体制側が主張する内容と、それを裏付ける物的証拠に矛盾点が存在することが明らかになり、アメリカ国内外並びに国連検察官からも極めて反体制組織の主張が疑わしいという論調を重く見たオバマは、この事件を理由にシリアに対する軍事力行使を踏みとどまりました。

主張と証拠の矛盾点は以下のとおりです。

  • サリン弾頭が落ちたとされるところから、オバマ政権の支配地域までは5km以上あり、証拠として回収されたロケットに充填される推進剤の量と形状では2kmしか飛ばない。下の画像で、緑が当時のアサド政権の支配地域、青が反体制組織の支配地域、赤がロケットの射程です。
  • なぜか反体制組織の支配地域とは関係のない、アサド政権側の陣地近くでサリンが検出されている。
  • そもそもサリン等の化学兵器はすでに放棄しており、国連が承認済みである。

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さて、日本はこのようなことは一切報道しませんでした。ただただ西側諸国(アメリカ、イギリス、EU諸国)の言い分に沿う形で報道しているわけです。

皆さんはどう理解するでしょうか。